#派生開発2019 派生開発カンファレンス2019参加報告 | はじめての派生開発カンファレンスでPFDの重要性を感じ,DXレポートの裏話を知る
概要
項目 | 内容 |
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イベント名 | 派生開発カンファレンス2019 |
URL | http://affordd.jp/conference2019.shtml |
ハッシュタグ | #派生開発2019 |
主催者 | 派生開発推進協議会 (AFFORDD) |
開催地 | 〒231-0005 横浜市中区本町1丁目6番地 横浜市開港記念会館 講堂・第1号室 |
開催日時 | 2019-06-20 Thu 10:00-18:00 |
参加人数 | ? |
SNS |
経緯
2018年12月に次の現場探しで面談を受けていた。その際に,USDMという文書形式で設計資料を用意していると話があった。組版技術に関しては,詳しいつもりだったが,はじめて聞いた文書形式で興味を持った。いろいろ調べていると,AFFORDDという団体が主体となって提唱している開発方法であるXDDPで使われる文書形式だと知った。
XDDPについて調べていると,どうやら派生開発において効果的な開発方法らしい。よく考えれば,今までの仕事は全て派生開発だった。そこで,XDDPというものに興味を持ち,代表的な以下の2冊の本に目を通した。
- 書評☆4 「派生開発」を成功させるプロセス改善の技術と極意 | 派生開発の極意は記録にあり!
- 書評☆3 [改訂第2版] [入門+実践]要求を仕様化する技術・表現する技術 | USDMによる要求記述方法と計測の重要性
しかし,本を読むだけでは実際のところどうなのかよくわからない。
それで,調べていると年次カンファレンスが毎年6月に開催されているらしい。しかも,開催地が横浜であり,現在の職場の新横浜からそこまで遠くない。
折角の機会なので,XDDPが実際のところどんな感じなのか,実践者の話をきくために一般参加した。
所属会社に申し出たところ,参加は許可されたが,参加費5000円と情報交換会4000円の9000円の自腹だった。
感想
まず会場に着いて,参加者の顔ぶれを眺めて感じたのが,中小企業のおじさんが多いというところだ。若者が少なく,いかにも中高年向けのカンファレンスという感じで,出鼻をくじかれた感じだった。
「XDDP導入を成功に導く処方せん小冊子」の活用について
午前中は,ワークショップの『「XDDP導入を成功に導く処方せん小冊子」の活用について」』参加した。マイクテストが不十分なのか,講堂の開会挨拶を中継していたのに,全然音声が聴こえない状態が続いた。この時点で,このカンファレンスのレベル感がわかった感じだった。
それで肝心のワークショップは,AFFORDDの分科会で作成された小冊子をどう活用するかについてのワークショップだった。XDDPやUSDMに ついての入門的なものを期待していたのに,いきなり実践者向けのワークショップで期待していたものと全然違った。普通に講堂での発表を聴講したほうが良 かったかなと思った。
ただし,ワークショップでは12月にハッカソンで同じチームだった人と偶然同じ卓でワークショップを行えた。偶然ながら面白い偶然だった。
ポスター展示・ツール展示
この日のお昼に「食評☆3 海風 (うみかぜ) 「鶏肉の梅ソース和え定食 630円」 | 横浜の日本大通り駅すぐの手頃な居酒屋」で食評を記したお店で昼食をとった。
昼食後は,フロアでポスター発表があったので,見て回った。いろいろ活動しているのはわかったが,あまり入門者向けの内容などはなく,興味をそそられるようなものは少なかった。
USDMをWeb上で記述するツールやUSDMのXMLの標準形式の発表があった。ただ,個人的にはUSDMはフォーマットがいまいち地味な感じがしていて,どうなんだろうと感じてしまった。
午後からは講堂でのセッションを聴講した。事前に講演資料が配布されていたので,移動中などに目を通していた。この試みはよかった。
2. 2. XDDP導入してから3年が経ちました~現在どうなったでしょうか~
三菱電機コントロールソフトウェアという中企業のXDDPの社内推進者による発表だった。
この発表では,XDDP導入後3年の経過報告だった。個人的には,1年目の導入時の報告が聞きたかったところだ。この発表では,XDDP導入のモチベーションとして,以下の2点を心がけていたところが参考になった。
- メトリクスをとって開発の生産性を計測して,XDDP導入前後の変化を可視化
- 社外に積極的にアピールして開発者の評価へ
また,導入否定派の対応も参考になった。否定派自体には何もせず,肯定派を褒め称えると,実際効果があるので,なぜ否定派がやらないのかという状況に自然となり,否定派も取り組まざるを得なくなったという。これは,新しい制度導入時のベストプラクティスとしていいなと感じた。このように,自然な形で取り込むのが理想的だろう。
3. プロセス分析表によるプロセス改善方法の最適化の提案~運転支援システムにおける品質向上への取り組み~
デンソーで自動運転も見据えた運転支援システムの開発者によるプロセス改善方法についての発表だった。
発生する不具合の根本原因を解決するために,PFDとプロセス分析表を使い,不具合の混入箇所を特定し,対策を表形式で検討することで,熟練者の長年の勘に頼らずに,対応の難しい根本原因の特定と対策ができたらしい。
日々の作業の不具合混入場所を特定するという抽象的で対応が難しい作業への解決策が示されており,なかなか興味深かった。
PFDは事前に読んだ書籍内では,あまり深く解説されていなかった。これは日々の作業フローの可視化として,取り組む価値があるかもしれない。
デジタルトランスフォーメーションの推進と政策展開~派生開発を企業競争力の強化ツールとするために~
総務省で,噂のDXレポート作成を担当した役人による,DXの政策展開についての発表だった。
今回のカンファレンスで一番面白い発表だった。学位を持っており,いかにも頭のいい人だというのがわかった。このカンファレンスでは異質な存在だった。
AmazonやMicrosoftなどのDXに関する取り組みを例に挙げて,ソフトウェアに投資することで,ハードウェアが不要になり,顧客満足度が高まるという現象を説明していた。例えば,Amazon Goによる無人ストアや,Microsoftのお膝元の空港機内の配色など。アプリなどで自動化することで,安く質の高いサービスを実現できる。
これが今後のIT産業でのポイントになるだろうとのことだ。また,これに関してはやはりクラウドサービスが強いなと感じた。
DXレポートは政府がIT産業をどう見ているかという視点が書かれており,是非読んでほしいとのことだったので,今まで自分には無関係だろうと思っていたが,会議中にざっと眺めてみた。
内容を眺めると,レガシーシステムの保守が課題になっており,これをうまく対応して,新しい最先端テクノロジーに人手を割くことが重要というメッセージが書かれており,まさにXDDPとリンクする内容だった。
DXを“派生開発”で勝ち残る~競争力強化の鍵は派生開発にあり!~
最後のセッションは,直前に発表した総務省の役人とAFFORDDの識者3名によるパネルディスカッションだった。
総務省の人による,ソフト開発社は給料の高い仕事をしてほしいという発言が心に残った。これは,暗にWebやクラウドを使った効率的な新しいサービスの開発に従事するようにというメッセージにも感じた。
情報交換会
近所のレストランで開催された情報交換会にも参加した。
PFDはあまり文書化されていないが,AFFORDDに参加したら,会員専用ページで資料を閲覧したり,開催されている勉強会に参加できるらしい。ホームページに情報が少なかったので,どうなっているのだろうと思っていたが,こうなっていたのか。
このやり方は,古い日本らしい悪いやりかただなと感じた。オープンの考え方とは真っ向のアプローチであり,XDDPの開発手法が世間に広がらない理由がわかった。
その他,PFDについて勉強方法などを聞いてみた。PFD自体がDFDをベースにしているので,DFDを勉強してはどうかと教えてもらえた。IT業界に入って,4年目になるが,DFDやUMLを用いた開発はあまり経験しておらず,DFDを実務で見たり書いたりすることはなかった。まだまだ勉強が足りないなと感じた。
昔作った名刺の残り4-5枚をここで全て配りきってしまった。
結論
XDDPについて何かしらわかるかと思って参加したのだが,入門者向けの内容はほぼなく,実践者向けの内容となっており,得られるものは少なかった。
その中では,PFDによるプロセスの可視化が参考になった。PFDにより,日々の作業を可視化することで,どこに問題があるのか第三者に相談することも可能になる。
カンファレンス全体としては,参加者の年齢層が高く,また参加企業も中小企業が多く,全体的なレベル感が高くないなと感じてしまった。コミュニティの運営も悪しき日本の慣習らしくクローズドな感じで,日本や世界であまり知名度がないのも納得だった。
ただし,普通に業務に従事しているだけでは,得られない情報があった。今回のPFDもそうだし,総務省のDXレポートの考え方もそうだ。新しい刺激を今後の参考にしていきたい。