Mastodon独自用語の「インスタンス」が気持ち悪い件
2017-04頃から分散型SNSであるMastodon (マストドン) が日本で流行りだした。それにともない,Mastodonとセットで「インスタンス (instance)」という言葉を見かけるようになった。
このMastodonでの「インスタンス」という用語の使われ方が意味不明で気持ち悪かったので,そのことをまとめた。
なお,この件に関してはv2.7.0で「インスタンス」が「サーバー」の用語に置き換わるという続報がある。そのことについて,2019-01-13に「Mastodon v2.7.0で独自用語の「インスタンス」が一般用語の「サーバー」に置き換わる模様」の記事にまとめている。
IT分野でのインスタンスの定義
従来,ITの分野での「インスタンス」という言葉は以下のどちらかの文脈で使われるものだった。
Mastodonはプログラミング言語ではないので,おそらく2のVPSという意味で使っているのだろうと思っていた。
しかし,それだと矛盾が生じる。それは,Mastodonの運営にVPSは必須ではないからだ。VPSではない,通常のレンタルサーバーや自宅サーバーなどの物理的に存在するサーバーにインストールして運営することも可能だ。
Mastodonでのインスタンスの定義
それでは,Mastodonにおける「インスタンス」とは,いったいどういう意味なのだろうか?Mastodonでの「インスタンス」の定義は,公式ユーザーガイドで以下のように定義されている。
赤字で強調した部分を日本語に意訳すると,「インスタンスとは,Mastodonを起動しているサーバーのこと」と解釈できる。
また,MastodonのFAQにも英語と日本語でもインスタンスの定義がかかれている。共に,意訳したものとほぼ同義だ。
Mastodonでの「インスタンス」の用語の問題点
ここで,なぜMastodonにおけるインスタンスという用語が気持ち悪いかの理由を述べる。
1点目。そもそも,インスタンスという用語はオブジェクト指向型プログラミング言語の意味で10年以上に渡り広く使われている。そのため,同じ単語で別の意味の用語を作るのは紛らわしい。
例えば,自分で新しく作成したソフトやサービスに「PC」という名前をつけたとする。そうした場合,「PC」という用語を使った場合,新しく作成したものを指すのか,既にノートパソコンとして使われているPCを指すのか,単語を見ただけでは判断できない。常に前後の文脈から判断する必要があり,紛らわしい。
2点目。Mastodonにおけるインスタンスとは,Mastodonを起動しているサーバーのことを指している。この定義のとおり,インスタンスという独自の用語を用いなくとも,単に「サーバー」や「Mastodon (の) サーバー」で意味が通じる。
そのため,わざわざ独自の用語を作る必要はない。実際,同じ分散型SNSであるGNU Socialでは2のVPSの意味でしかインスタンスという用語を使っておらず,サーバーという単語を用いている。
そもそも,Webサービスができるたびにサーバーのことを別の独自の用語に名付けていたらキリがない。同じサーバーのことを,それぞれのWebサービスの文脈に応じて別々の用語で呼び分けて,いったい何の意味があるのだろうか?煩わしいだけだ。
このように,Mastodonでの「インスタンス」という単語は,そもそも必要がなく,紛らわしいだけである。新しく分散型SNSを知った人にとっては,「インスタンス」という言葉の意味を理解する負担が発生するため,無駄に参入障壁を上げるだけである。
なぜこのような用語を作ったのか意味不明で理解に苦しむ。
まとめ
Mastodonにおける「インスタンス」という用語の問題について記した。
Mastodonにおける「インスタンス」という言葉は「サーバー」に置き換えても問題ない。インスタンスではなくサーバーという単語のほうが意味が伝わるので,こちらを推奨する。
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