KaoriYa版Vimの独自設定を無効化する方法
WindowsにおけるVimとしては,KaoriYaで配布されているVim(KaoriYa版Vim)が日本では有名だ。
KaoriYa版では使いやすいように公式とは異なるKaoriYa独自の追加設定がなされている。通常であれば,使いやすくなるので問題ないが,一部自分の設定に影響を及ぼしてしまう。このKaoriYa独自設定を無効化したくなったのでその方法を調べた。
2016-08-17T22:00追記:確認にはVim 7.4.1944 +kaoriya (2016-06-20)を使った。
端的に結論を書くと,以下のコマンドをコマンドプロンプトから実行して,KaoriYa版Vimと同じ場所に無効化のための設定ファイルを作ればいい。
REM VIM変数にKaoriYa版Vimの配置場所を指定。例:C:\Users\senooken\local\opt\vim74-kaoriya-win64
set VIM=%USERPROFILE%\local\opt\vim74-kaoriya-win64
echo let g:vimrc_local_finish = 1 > %VIM%\gvimrc_local.vim
echo let g:gvimrc_local_finish = 1 > %VIM%\vimrc_local.vim
KaoriYa版Vimを普段使わない理由と使う理由
個人としては,2年ほど前まではKaoriYa版Vim(GVim)を使っていた。しかし,途中からChocolateyでインストールできることに気づいたので,公式で配布されているVimに切り替えた。公式のVimに切り替えた理由は以下2点だ。
- 公式のインストーラーを使えば,右クリックにメニューが追加され便利。
- 派生版よりも公式を使ったほうが安心。
第1の理由だが,公式版のVimをインストールすれば,ファイルを右クリックしたときに,[Edit with Vim]というメニューが表示され,これを選ぶことで素早くどんなファイルでもGVimで開くことができる。KaoriYa版GVimでは右クリックのメニューには登録してくれないので,右クリックメニューで使えるようにするには以下のどちらかの方法で自分で設定することになる。
- 自分でレジストリーをいじって登録
- 右クリック→[送る]の候補に登録
後者の[送る]メニューへ登録するには,%AppData%\Microsoft\Windows\SendTo
ディレクトリ(エクスプローラーのアドレスにshell:sendto
でもアクセス可能)にgvim.exeのショートカットを配置すればいい。この方法なら管理者権限も不要で簡単だ。しかし,[送る]メニューは右リックメニューの真ん中から下の方に表示されるので,アクセスしにくい。
2016-08-16T23:30追記:なお,右クリックメニューにこだわらなければタスクバーに登録したアイコンからGVimを起動して,ファイルをGVImにドラッグドロップすることでも,素早くアクセスできる。しかし,GVimの起動のためにマウスカーソルをタスクバーに移動させると気が散るのであまりよくない。
第2の理由としては,KaoriYa版独自の設定は使わないほうがいいと思ったからだ。例えば,KaoriYa版のVimでは。fileencoding
にjapan
という値を使える
2016-08-16T23:30追記:コメントでの指摘のとおり,encoding
の値としてjapan
はVimの公式設定として利用可能な値だ(:help encoding-values
)。ここは,KaoriYa版ではfileencodings
の値に,guess
が使えるという記憶違いだった。KaoriYa版の独自設定は,当てているパッチをみれば原理的にはわかるらしいが,Vimのソースに関する知識がいるので理解するのは簡単ではない。公開日が2009年と少し古いが,以下の記事でKaoriYa独自機能について解説されているのでわかりやすい。
この記事で紹介されている通り,KaoriYa版どうかはif has('kaoriya') ... endif
で判別できるので,KaoriYa版独自機能を使うならば,このように条件判定を行ってから使い,公式版のVimでも動作するようにしよう。
しかし,当然ながらこの設定はVimのヘルプには掲載されていない。そのため,例えば,外人やVimをよく知らない人がこの設定をみたら意味を理解するのが極めて難しくなる。だから,このような公式で提供されていない非標準設定の利用は控えるべきだろう。
上記2点の理由から普段はKaoriYa版Vimは使っていない。ただし,KaoriYa版Vimでなければならない場面が1箇所ある。それは,管理者権限が使えない場面だ。管理者権限が使えない状況というのは,例えば会社や共有のパソコンなどでの利用が想定される。管理者権限が使えなければ,公式で配布されているイン
ストーラーでインストールすることができない。実際は,公式ではこのことを考えて解凍するだけで使えるバイナリ版も配布している。しかし,これは使わないほうがいい。なぜか?それは,公式の単独パッケージでは以下2点の問題があり極めて使いにくいからだ。
- バージョンが古い。
- syntaxやplugin,diff.exeなど通常であれば付属する標準設定・プラグインや標準コマンドが付属しない。
このことから,管理者権限が使えない場面や,レジストリーを汚したくない,携帯性を高めたいという場面においてはKaoriYa版Vimを使うしかない。そのため,会社ではKaoriYa版GVimを使っている。
2016-08-16T23:30追記:コメントでの指摘で初めて知ったが,現在の最新の公式のWindows版VimのNightly BuildがGitHubで配布されているようだ。ここからであれば,必要な付属品が全て同梱されたバイナリーが入手できることを実際にダウンロードして確認できた。指摘をくれたkaoriyaさんにツイートで教えてもらったが,VimのWebページではアナウンスしておらず,メーリングリストでお知らせがあったようだ。
Releasesのページを確認したところ,2016-01-27のv7.4.1185からバイナリー版の配布を始めたようだ。約半年前の今年に入ってからなので比較的最近配布されるようになったようだ。
KaoriYa版Vimの問題点
しかし,KaoriYa版Vimでは前述の通り独自設定がなされており,場合によっては自分の設定と競合することもあるだろう。実際に僕には問題となった。具体的には,gvimrcで設定されているcolorscheme morning
の設定だ。
普段は~/.vimrc
に以下の設定を記述することで,VimとGVimの両方でカーソル行を薄水色でハイライトするようにしている。
set cursorline " hightlight cursor line
highlight CursorLine cterm=NONE ctermbg=LightCyan guibg=LightCyan
公式のVimとGVimを使う限り,この設定で何も問題はない。しかし,KaoriYa版GVimでだけ,カーソル行のハイライトがmorning
のカラースキームで上書きされてしまう。
回避策としては,~/.gvimrc
にも上記のハイライト設定を記述することで,KaoriYa版GVimで設定されたハイライト設定をさらに上書きする方法がある。しかし,公式版のVimでは正常に動作しているのに,日本独自のKaoriYa版Vimのためだけにこのような設定をするのは好ましくない。それに,今まで~/.vimrc
の一箇所の設定だけで済んでいたのに,同じ内容を~/.gvimrc
にも記述する必要があり,保守性が悪くなってしまう。
2016-08-16T23:30追記:コメントでの指摘のとおり本来であれば,GVim固有の設定は~/.gvimrc
に記述すべきであり,このことは以下のとおり公式でも推奨されている。
しかし,:highlight
のハイライト設定に限れば,VimとGVimとで同時に設定でき,例えばcolorschemeの設定などで分けて書くのはあまり現実的ではない。だから,~/.vimrc
の設定をそのまま使いたい。
KaoriYa版Vimの独自設定の無効化方法
幸いなことに,KaoriYa版の設定を無効化する方法があるので,この方法で対応する。
無効化の方法は,KaoriYa版に付属するvimrcとgvimrcの冒頭に記載されている。内容をまとめると以下の表のとおりとなる。
vim | gvim | ||
---|---|---|---|
グローバル設定 |
|
| |
ユーザー設定 |
|
|
変数$VIMはKaoriYa版のvim.exeやgvim.exeの配置場所を表す。上記設定を簡単に実現するならば,例えばvimrc_local.vim
内にlet g:vimrc_local_finish = 1
と記述すればよい。ユーザー設定ファイル.vimrc_first.vim
も一応使えるが,ホームディレクトリをあまり汚したくないのでグローバル設定で対処した。
同様の設定をgvimrcに対しても設定すればいい。手作業でやってもいいが,面倒なのでコマンドプロンプトで以下のコマンドを実行してvimrc_local.vim
を作成してやればKaoriYa版Vimの独自設定の無効化は完了だ。
REM VIM変数にKaoriYa版Vimの配置場所を指定。例:C:\Users\senooken\local\opt\vim74-kaoriya-win64
set VIM=%USERPROFILE%\local\opt\vim74-kaoriya-win64
echo let g:vimrc_local_finish = 1 > %VIM%\gvimrc_local.vim
echo let g:gvimrc_local_finish = 1 > %VIM%\vimrc_local.vim
自分にはKaoriYa版のgvimrc
の設定だけが問題だったので,gvimrc
だけ無効化した。
グローバル変数の設定だけで済むのならば,自分の~/.vimrc
に以下を追記してやるだけで済む。
let g:vimrc_local_finish = 1
let g:gvimrc_local_finish = 1
この程度であれば,自分の設定で保持してもいいのだが,無効化にはファイルの存在までチェックしているので,面倒だがファイルを作るしかない。そのため,vimrc_local.vim
にg:vimrc_local_finishの設定も押し込めた。おそらく,このグローバル変数が他でも使われていることを心配して念の為二重にしているのだろう。
まとめ
KaoriYa版Vimの独自設定を無効化する方法をまとめた。こういったローカル設定に関する情報はあまりないと思うので,誰かの参考になるのではないかと思って記事にまとめた。
KaoriYa版Vimは1999年から配布が行われており,約20年の歴史がある。日本でのVimの普及に大きな役割を担っていると思う。今後もVimを使っていくつもりなので,KaoriYa版Vimの動向もときどきチェックしていこうと思う。上記のKaoriya版独自設定の無効化にでは,グローバル変数だけでいいのではないかという意見も気が向いたらissueで質問してみようかしら…(遠い目)。