WebベースGUIライブラリElectronのチュートリアルの実行
2016-05-11にElectron 1.0のリリースがアナウンスされた(実際のリリースは2016-05-09)。気になったので試しにチュートリアルのサンプルアプリの作成からパッケージ化までやってみた。
ElectronはGitHub社により作られた,クロスプラットフォームなデスクトップアプリを開発するためのライブラリとなっている。JavaScriptのライブラリであるNode.jsとブラウザであるChromiumをベースにHTML,CSS,JavaScriptなどのWeb技術で開発できるのが特徴となっている。最初のリリースは2013-07-15となっており,リリースが始まって約3年経過したことになる。時間が立って安定してきたので,1.0がリリースされたのだと思われる。
ネットで見ていてもElectronでのアプリ開発例をちらほらみかけるようになり,いいタイミングなのでちょっとだけ試してみることにした。
動作環境はUbuntu 14.04 64bitであり,チュートリアルとしてQuick Startを参照した。
少し長いので目次も書いておく。
Electronのインストール
Electronのインストール方法は2種類ある。
npm
のモジュールelectron-prebuilt
をインストール。- 公式で配布されているバイナリをインストール。
開発中であれば,どちらの方法でインストールしてもよい。しかし,最終的にパッケージングして配布するときは2.のバイナリを使うことになる。
npm
のモジュールelectron-prebuilt
をインストール
npm
のモジュールであるelectron-prebuilt
はビルド済みのElectronを含んでいる。以下のコマンドでインストールできる。
mkdir -p ~/local/
npm install -g --prefix=$HOME/local/ electron-prebuilt
npm install -g
でインストールすると,既定では以下のディレクトリにインストールしようとする。
/usr/bin
/usr/lib/node_modules/
これらのディレクトリにインストールするには管理者権限が必要なので,--prefix
オプションで以下のディレクトリにインストールされるように変更した。
$HOME/local/bin
$HOME/local/lib/node_modules/
.bashrc
などでexport PATH=$HOME/local/bin:$PATH
などと記述してPATH変数を設定しておく。これで,electron
コマンドをインストールできた。以下のコマンドでelectron
が起動する。
electron
npmでのインストール方法は以下を参照した。
公式で配布されているバイナリをインストール
Electronの各OS向けの最新のバイナリは以下のGitHubのページで公開されている。
ここから各OS,アーキテクチャ向けのelectronをダウンロードする。今回はUbuntu 14.04 64bitなので,electron-v1.1.0-linux-x64.zip
をダウンロードして,展開し,~/local/opt/
に配置した。
コマンドでやると以下のようになる。
mkdir -p ~/local/opt/; cd ~/local/opt/
VER=1.1.0
wget -nc https://github.com/electron/electron/releases/download/v$VER/electron-v$VER-linux-x64.zip
unzip -d electron-v$VER-linux-x64{,.zip}
electronを起動するときは以下のコマンドを入力する。
~/local/opt/electron-v1.1.0-linux-x64/electron
これでElectron自体のインストールは完了となる
サンプルアプリの作成・実行
まず,今回作るアプリの名前をyour-app
として作業ディレクトリを作る。
mkdir -p ~/tmp/your-app
cd ~/tmp/your-app
一般的に,Electronアプリは以下のディレクトリ構成となる。
your-app/
├── package.json
├── main.js
└── index.html
以下で各ファイルの簡単な説明とサンプルを示す。
なお,ファイル作成を簡単にするためにファイルサンプルの前後に以下のシェルコマンドを入れている。
cat << EOF > ファイル名
...
EOF
これにより,catからEOFまでをターミナルにコピーペーストするだけでファイルが作成できる。
package.json
package.json
の形式はNodeのモジュールと同じで,main
フィールドでアプリのメインプロセスとして実行するスクリプトを指定する。例えば,以下のようになる。
cat << EOF > package.json
{
"name" : "your-app",
"version" : "0.1.0",
"main" : "main.js"
}
EOF
package.json
にmain
フィールドがなければ,Electronはindex.js
を読み込もうとする。
main.js
main.js
はウィンドウを作り,システムイベントを操作する。サンプルは以下となる。
cat << EOF > main.js
const electron = require('electron')
// Module to control application life.
const app = electron.app
// Module to create native browser window.
const BrowserWindow = electron.BrowserWindow
// Keep a global reference of the window object, if you don't, the window will
// be closed automatically when the JavaScript object is garbage collected.
let mainWindow
function createWindow () {
// Create the browser window.
mainWindow = new BrowserWindow({width: 800, height: 600})
// and load the index.html of the app.
mainWindow.loadURL('file://' + __dirname + '/index.html')
// Open the DevTools.
mainWindow.webContents.openDevTools()
// Emitted when the window is closed.
mainWindow.on('closed', function () {
// Dereference the window object, usually you would store windows
// in an array if your app supports multi windows, this is the time
// when you should delete the corresponding element.
mainWindow = null
})
}
// This method will be called when Electron has finished
// initialization and is ready to create browser windows.
// Some APIs can only be used after this event occurs.
app.on('ready', createWindow)
// Quit when all windows are closed.
app.on('window-all-closed', function () {
// On OS X it is common for applications and their menu bar
// to stay active until the user quits explicitly with Cmd + Q
if (process.platform !== 'darwin') {
app.quit()
}
})
app.on('activate', function () {
// On OS X it's common to re-create a window in the app when the
// dock icon is clicked and there are no other windows open.
if (mainWindow === null) {
createWindow()
}
})
// In this file you can include the rest of your app's specific main process
// code. You can also put them in separate files and require them here.
EOF
index.html
最後に,index.html
は表示したいWebページだ。
cat << EOF > index.html
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<meta charset="UTF-8">
<title>Hello World!</title>
</head>
<body>
<h1>Hello World!</h1>
We are using node <script>document.write(process.versions.node)</script>,
Chrome <script>document.write(process.versions.chrome)</script>,
and Electron <script>document.write(process.versions.electron)</script>.
</body>
</html>
EOF
サンプルアプリの実行
main.js
,index.html
,package.json
を作ったら,アプリを実行してみよう。
npm
でelectron-prebuilt
をインストールしていれば,以下のコマンドでアプリを実行できる。
electron .
バイナリをインストールしていれば,以下のコマンドでアプリを実行できる。
~/local/opt/electron-v1.1.0-linux-x64/electron .
electron
コマンドにindex.html
,main.js
,package.json
が格納されているディレクトリを指定するとよい。
実行すると,以下のように開発者ツールの画面が開いた状態のウィンドウが表示される。
パッケージング
公式で紹介されているアプリの配布方法には以下の3通りがある。
- アプリディレクトリ丸ごとの配布。
asar
コマンドでアプリディレクトリを.asar
ファイルに固めて配布。- Electronごと配布。
1と2は,配布するファイルサイズは小さいが利用者の環境にElectronがインストールされていないと動作しない。3は配布するファイルサイズは40 MB以上と大きくなるが,Electronごと配布するので,利用者の環境にElectronがインストールされていなくても動作する。利用者がElectronをインストールしていることは想定しにくいので,実際には3の方法を採用することになるだろう。しかし,2の方法は,.asar
ファイルにElectronを関連付けさせておけばダブルクリックで実行できるので悪くない方法だ。
なお,この他にサードーパーティーのパッケージ化コマンドとしてelectron-packager
とelectron-builder
なども存在するが,調査に時間がかかるので省略した。実際にアプリをリリースするときに検討すればよいだろう。
アプリディレクトリ丸ごとの配布
1の方法は,単に作成したアプリディレクトリ(今回は~/tmp/your-app
)を配布するだけだ。利用者側ではelectron
コマンドでこのディレクトリを指定すれば起動できる。
この方法だと,ユーザーにソースコードが丸見えなので,ソースコードをユーザーに隠したいときは使えない。
asar
コマンドでアプリディレクトリ.asar
ファイルに固めて配布
事前にアプリ一式をasar
コマンドで.asar
ファイルに固めて配布する。ユーザー側ではelectron
コマンドで.asar
ファイルを指定することで実行できる。
ソースコードを利用者から隠したいときにこの方法が使える。
まず,npm
からアプリを固めることができるasar
コマンドをインストールする。
npm install -g --prefix=$HOME/lobal asar
そしてasar
コマンドでアプリディレクトリを.asar
ファイルに固める。イメージとしてはtar.gzなどに圧縮するような感じだ。
asar pack your-app your-app.asar
# asar pack your-app{,.asar} ## シェルのブレース展開でこうしてもよい。
これで,以下のコマンドでElectronのアプリケーションを実行できる。
electron your-app.asar
.asar
ファイルをelectron
コマンドで開くように関連付けさせればダブルクリックでも実行できるだろう。
Electronごと配布
利用者がElectronをインストールしていることは想定しにくいので,Electronごと配布する。
- 配布先OS用Electronのダウンロード
まず,以下にOSごとのElectronが配布されているので配布先のOSのものをダウンロードする。
例えば,冒頭でも行ったがLinux版だと以下のコマンドでElectron本体をダウンロードして,解凍する。
VER=1.1.0
wget -nc https://github.com/electron/electron/releases/download/v$VER/electron-v$VER-linux-x64.zip
unzip -d electron-v$VER-linux-x64{,.zip}なお,解凍後のディレクトリは
electron-v1.1.0-linux-x64
というようなOSごとのディレクトリ名になっている。説明を簡単にするために,このディレクトリを単にelectron
と表記する。 - アプリ一式を
asar
コマンドでapp.asar
に固める。
ファイル名を
app.asar
にしてasar
コマンドでアプリ一式を固める。後からファイル名をapp.asar
に変えるだけでもよい。例:
asar pack your-app app.asar
## または以下のように既に固めたasarファイルのファイル名を変えるだけもよい。
# asar pack your-app your-app.asar
# mv your-app.asar app.asar - 固めた
app.asar
をElectronに配置。
配布先OSに応じて以下の場所に
app.asar
を配置する。app.asar
の配置場所OS 配置場所
electronは展開したElectronのディレクトリのこと。例:electron-v1.1.0-linux-x64。 OS X electron/Electron.app/Contents/Resources/ Windows, Linux electron/resources/
これでパッケージングは完了だ。後はelectron
ディレクトリに存在する,OSごとのelectron
ファイルをダブルクリックなどで起動するとアプリが実行される。
OS | ファイル名 |
---|---|
Linux | electron |
Windows | electron.exe |
OS X | electron.app |
必要に応じて,上記の実行ファイル名electron
をアプリケーションの名前に変更したり(例:your-app
),アイコンを設定すればパッケージングは完了となる。
まとめ
Electronの導入として,公式サイトのチュートリアルをやってみて,パッケージングの方法までまとめた。
チュートリアルをやっていて躓いたのは,Electronごとパッケージ化の際のファイル名だった。app.asar
というファイル名はただのサンプルかと思っていたらそうではなくて,このファイル名でなければならなかった。これに気づくのに時間がかかってしまった。
実際にアプリを作成するにはmain.js
の書き方や使えるモジュールなど細かく見ていかなければならない。この記事を,今後Electronでアプリを作成する際の足がかりしていきたい。