欧文フォントにフリーで高品質なTeX Gyreフォントを使おう
修士論文の研究室内最終報告書の印刷・提出で失敗した。TeXで書いていたのだが、欧文書体の太字の設定が反映されていなかった。
今まではTeXのディストリビューションとしてW32TeXを使って作業しており、そのときに欧文のセリフ体とサンセリフ体にTimes New RomanとArialが埋め込まれるようにしていた。しかし、つい最近になってTeXのディストリビューションをTeX Live2013に変えた。TeX側にフォントをインストールするのを忘れていたため、フォントが埋め込まれず太字が反映されなかったようだ。
以前から思っていたが、Times New RomanとArialは広く使われているが、フリーでないのであまり使うべきでないと思う。この機会に一生使えるようなフリーで高品質な欧文フォントを探してみた。
探した結果、フォント名にTeXの名を冠するTeX Gyreフォントに出会った。このフォントはTimesやHelveticaなどの「Adobe 基本 35 書体」に対応するOpenTypeフォントを提供しており、フリー(商用利用可能)で品質が高い。
フォントは公式サイトで配布されている。ライセンスはGUST Font Licenseというもので、法的にはLaTeX Project Public License (LPPL), version 1.3c以降と同等とのことだ。
参考:http://www.gust.org.pl/projects/e-foundry/licenses
TeX Gyreフォントのファミリは以下のとおりになっている。
TeX Gyre ファミリ名 | 元のAdobe フォント | TFM名 |
---|---|---|
TeX Gyre Adventor | Avant Garde | qag |
TeX Gyre Bonum | Bookman Old Style | qbk |
TeX Gyre Chorus | Zapf Chancery | qcs |
TeX Gyre Cursor | Courier | qcr |
TeX Gyre Heros | Helvetica | qhv |
TeX Gyre Heros Cn | Helvetica Narrow | |
TeX Gyre Pagella | Palatino | qpl |
TeX Gyre Schola | New Century Schoolbook | qzc |
TeX Gyre Termes | Times | qtm |
どのファミリも基本的にRegular、Italic、Bold、Bold Italicの4スタイルを持っている。
引用元:http://zrbabbler.sp.land.to/xelatex1.html
TeX Gyreフォントの内、それぞれSerif、San serif、Typewriter体である以下の3書体は重要度が高いと思われる。
- TeX Gyre Termes
- TeX Gyre Heros
- TeX Gyre Cursor
serifやsan serif体のフォントはTeX Gyreフォントの中に他にもあるが見比べたところ上記のフォントが個人的に良いと思った。これらのフォントを使うには以下のように提供されている各種パッケージを使うのが楽だ(TeX Live 2013では標準でインストールされている)。
\usepackage{tgtermes,tgheros,tgcursor}
しかし、これらの提供されているパッケージを使うと日本語のフォントが固定され、ウェイトが変えられない。具体的には、太明朝や太ゴシック類が使えなくなってしまう。 従来の日本語フォントとTeX Gyreフォントを使うには以下のように英字フォントの指定に必要な部分だけ直接入力する。
\renewcommand{\rmdefault}{qtm} % TeX Gyre Termes
\renewcommand{\sfdefault}{qhv} % TeX Gyre Hereos
\renewcommand{\ttdefault}{qcr} % TeX Gyre Cursor
参考:http://fugenji.org/thomas/diary/index.php?no=r829
または、パッケージを読み込んだ後に太字の設定を調整すれば良いらしい(未確認)。
\usepackage{tgtermes,tgheros,tgcursor}
\renewcommand{\bfdefault}{bx}
参考:http://oku.edu.mie-u.ac.jp/tex/mod/forum/discuss.php?d=902
こうすることでTeX Gyreフォントを使える。品質が高くてかつフリーなのでおそらく一生使っていけるのではないかと思っている。
個人的にはTeX Gyre Cursorは数字0とアルファベットOの区別がつきにくいので、以下のようにしてTX Typewriterを使っている。
\renewcommand{\ttdefault}{txtt}
TeX Gyre Termesは@の斜体(italic)など記号関係で太字や斜体に対応していないものが一部ある。
TeX GyreフォントはTeXに限らずLibreOffice WriterやWordなどの他のソフトでも使え、しかもM+フォントとは異なりフォントを指定しなくても太字・斜体の変更も対応できている。今後は特に理由がなければTeX Gyreフォントをメインの欧文フォントに使うことにしよう。
> \usepackage{tgtermes,tgtheros,tgcursor}
とありますが、
tgheros
では?
ご指摘ありがとうございました。すぐ下で、`tgheros`と書いていますので、ただの入力間違いでした。直しました。