#mmt18 Mastodon Meetup at Tokyo参加報告 | LTLこそがMastodonの本質なのか?
Mastodonの会議があったので参加した。
概要
項目 | 内容 |
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イベント名 | Mastodon Meetup at Tokyo |
URL | https://www.mmt18.info |
ハッシュタグ | #mmt18 |
主催者 | MMT制作委員会 |
開催地 | IIJ 東京本社 (〒102-0071 東京都千代田区富士見2丁目2−10−2 飯田橋グラン・ブルーム) |
開催日時 | 2018-11-03 Sat 14:00-16:00 |
参加人数 | 25 |
SNS |
経緯
Mastodonがブームになったのは2017-04頃だ。2017年はMastodonブームもあり,会議などが積極的に開かれていたようだ。しかし,2018年になってからは2018-06-16に開催された「Petit Mastodon Constructive Meetup」くらいしかなかった。
もともとMastodonだけの集まりというのにはあまり興味がなかった。というのも,自分はGNU social勢であり,個人的にもMastodonは好きではなかったからだ (詳細はいずれ)。
Mastodonには興味はないものの,普段分散SNS上でみかけるサバ管 (サーバー管理者) 達がどういう人なのかは興味があった。そのため,今回は中の人のご尊顔を拝顔することを目的に参加した。
感想
まず会場が立派な建物だった。IIJというインターネットの会社のフロアだった。写真撮影禁止とのことだったので,会場の写真はないが,プロジェクター,WiFi,電源・座席など設備は完璧だった。Twitchでのストリーミング配信もあった模様。
会の内容は,5人の登壇者の講演と最後にパネルディスカッションだった。発表資料の一部はconnpassのページに公開されている。
それぞれの発表について簡単にメモを残す。会議中の自分の投稿も参考になる。
TOMOKI++: ボカロ丼の立ち上げ経緯や運営、ボーカロイドコミュニティ内のボカロ丼の位置について
最初の講演は,ボカロ丼のサバ管であるTOMOKI++によるボカロ丼の運営に関する発表だった。
ボカロ丼は2017年4月に設置され,friends.nicoよりも先に運営を開始したとのことで,日本におけるMastodonサーバーでは古参に入るようだ。また,TOMOKI++は会社の社長もやっているらしく,いろいろ活動的な人のようだ。
印象的だったのは,ボカロ丼はLTL (Local Time Line: ローカルタイムライン) が中心のMastodonサーバーだということだ。これが強く印象に残った。
また,運営費はさくら3.7万円,AWS S3 3000円で毎月4万円くらいかかっているそうだ。けちれば3万円程度で運営できるとのこと。登録者数2400人程度。
ちなみに,自分が運営しているhttps://social.senooken.jpは登録者数1名でサーバー代はCOERSERVERのCORE-MINIプランを使っており毎月約300円 (ストレージ60 GB) 程度。
運営費はグッズ販売で回収しているのだそうだ。ボカロ曲は一次創作なので販売できる。イラスト類は二次創作なので,販売が難しいとか。創作関係をメインにしているサーバーならではのやり方だなと感じた。
また,グッズ販売なども基本的にはユーザーなどが勝手にやっているらしく,公式CDだけ頑張るくらいで,後は成果物をサイトで宣伝するだけらしく,運営は手間がかかっていないとか。創作関係のユーザーの活発さが伺えた。
とねぢ: 箕面どんのこれまで、今、これから
続いて箕面どんのサバ管であるとねぢによる発表だった。自身のこれまでのインターネット遍歴も交えながら,箕面どんの設立経緯の紹介だった。
インターネット黎明期の牧歌的なネットを経験してきたとのこと。当初サーバーに勧誘したとこ ろ,沈没の連続だったので,そのような質の高いサーバーにしようとしたようとしたところ,心地よいHTL (Home Time Line: ホームタイムライン) やFTL (Federal Time Line: 連合タイムライン) ができたとのことだ。
特に,mstdn.jpやfriends.nicoのように,攻撃的だったり品のない発言を許可するようなサーバーだと,人によってはうんざりすることもあるだろう。サバ管が登録ユーザーを監視して,登録者の質を担保すると,このようなうんざりすることを避けられるので,ユーザーエクスペリエンスは向上するかもしれない。分散SNSの趣旨とは外れてしまうが,信頼できるサバ管であるならば,このように効率的で質の高い交流ができるのかもしれない。
これは中央集権と分散の対比になっており,興味深かった。分散SNSの思想に基づいて,お一人さまサーバーを運営する場合,気のあうユーザーを自分で探す必要がありこれはけっこう手間だ。そもそも,分散SNSに限らず未知の場所にいる自分と気の合う人間と交流するというのは難しい。この手間を大きく省けるのが,LTLをメインとした中央集権型の分散SNSの使い方なのかもしれない。
もっとも,これは箕面どんの登録者数が少ないからできることともいえるかもしれない。箕面ど んの登録者数は35名であり,学校の1クラス程度の人数だ。これが100人とか1000人とかになってくると,さすがに質を担保しきれない気がする。この 当たりは今後の様子をみるのがよいだろう。
なお,箕面どんの運営費はさくらで付き7000円とか。
また,この発表はもともと持ち時間が5分だった。しかし,実際の発表は倍以上の時間がかかっていた。1分2分程度ならば目を潰れるしカバーできるが,これは度が過ぎていた。これはほめられることではない。 事前に想定できたはずだ。短く終わる分には全く問題ないが,長くなるのは会議の運営にも,参加者全員にも影響がある。時間を守らないならば,持ち時間を用 意する意味がない。予定を大幅に超過するならば,事前にその時間を確保すべきだった。そのため,この件に関しては発表内容とは別で批難しておく。
ぐすくま: 鯖缶工場について
アビスドンのサバ管であるぐすくまによるDiscordのグループである鯖管工場についての紹介だった。
鯖管工場では,分散SNS全般の話題を取り扱っている。主な話題は,新規Mastodonサーバーの設置支援だ。実績としては,4サーバー程度はこのグループがきっかけで設置できたとのこと。現状,支援者が足りないらしく,支援者を募集している。
また,Discordはクローズドだから外から見えないことを課題だと感じているとのこと。
個人的にはDiscordはDiscordでSlackとかSkypeとかと同じでクローズかつ不自由なソフトを使っている。外から見えないと,けっこう不条理なことがあったりする。透明性も確保できないしけっこう危ない。
GNU socialだとリストという機能があり,特定の話題についての投稿をリスト参加者で共有できる。これがどういう仕組みなのかはよくわかっていないが,Mastodonにも同じような機能があれば,オープンなままで議論できていいのではないだろうか。あるいは,Googleグループのようにメーリングリストを使うとか。
鯖管工場は興味本位で登録はしたものの,内容が基本的にMastodonだし,自分もそこまで分散SNSにリソースを避けていないので,現在は通知を切って,放置している。なんとなくMastodonのサバ管が多いから,絡みにくい。
この発表で前半のセッションが終わり,休憩が入った。
ろーかるゆーざー: 私や当インスタンスの紹介を通じて、コレまでどの様な技術を習得してきたか
後半のセッションの1発目は,自宅サバ勢でSocial.bluecore.net管理人のろーかるゆーざーによるサーバー設置で得たノウハウについての発表だった。
ネットワークエンジニアであり,技術的な興味に引かれてMastodonのサーバーを設置し たとのこと。Mastodonはいろんな技術を使っているらしく,ネットワークの構成とかの話がいろいろあった。ネットワークエンジニアでもWebエンン ジニアでもない自分にはよくわからない話だった。
ただ,個人的にはMastodonは不必要に複雑なことをやっているような気がしている。自分が運営しているGNU socialのお一人さまサーバーは,レンタルサーバーに設置しているので,ネットワークの設定とか面倒くさいことはとくにない。パフォーマンスのことも考える必要もないし,せいぜいストレージの容量を気にするくらいだ。
これくらいの気楽さがないと,お一人さまが普及するのは難しいと思っている。
もちろん技術的な探究心をもっていろいろやるのはいい。ただ,分散SNS的には分散SNS上にお一人さまが増えてくれるのがいいし,それをやるには気楽にサーバーをどんどこ設置できる必要がある。それを考えると,GNU socialはもっと普及していいと思う。
HakabaHitoyo: レコメンデーション・フェアネス概論
発表の最後は,3.distsn.orgのサバ管であるHakabaHitoyo (vaginaplant) によるレコメンデーション・フェアネス概論と題した発表だった。分散SNS関係ではこの人をよくみかけるので,何者なのだろうと興味を持っていた。
発表の内容は,専門用語が多くてあまり理解できなかった。未知のユーザーを発見する手段の公平性についての考察だった。
とねぢの発表の感想でも書いたが,自分にあうユーザーを探すのは手間なので,これが楽にできるならそれはたしかに嬉しい。しかし,それはそんなに重要なことなのだろうか。
vaginaplantはこれに強いこだわりがあるようで,Mastodon本体にもこうい う機能を入れようとしていたような気がする。自分としては,そんなに重要なことではないような気がする。他人に勝手に「お前はこういうのが好きなんだ ろ?」とオススメされたものがはたしていいのものなのか。結局,自分に合うものは自分で探すしかないのではないか?自分が信頼できること,所属するコミュニティなどから口コミ,人づてにたどっていくしかないのではないだろうかな。
あとは,vaginaplantはスライドにHTMLを使っている。自分も昨年の2017年 まではHTMLでスライドを作っていた。しかし,これは労力がかかる割に,見た目がいまいちなだ。実際,今回のスライドも見た目がいまいちに感じた。例え ば,フォントサイズや配置だ。HTMLでこれらをいい感じに調整するのはかなり手間だ。素直にLibreOffice Impressか不自由なPowerPointとか,Googleスライドでスライドを作ることを強くオススメする。
パネルディスカッション
発表が終わったので,最後は発表者と聴講者を交えてパネルディスカッションとなった。
パネルディスカッションのお題は以下2点だ。
- マストドンに追加すべきだと思う機能
- 新しいつながりを作るために大事だと思うこと
パネルディスカッションでは,まず本日の登壇者の意見をきき,その後会場にも意見をきき,と りとめもなくお互いの意見を交換して議論をする進行だった。個人的には,司会進行が議論をどういう方向に持って行きたいのか主導権を発揮していなかったよ うに感じ,議論はやや発散気味だった。
この日は夕方からMTGの大会に参加するつもりだったので,1点目のお題までしか聴かなかった。そのため1点目のお題にだけ記録や感想を記す。
このパネルディスカッションで登場した,登壇者と会場からの意見は以下のとおりだった。
登壇者 | 意見 |
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vaginaplant |
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ろーかるゆーざー |
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TOMOKI++ |
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とねぢ |
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会場 |
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いろいろ意見が出たが,個人的にはMastodonに一番必要な機能はプラグイン機能だろう。パネルディスカッションの最中で,これから述べるvaginaplantが発言していた内容がそれを物語る。結局のところ,Mastodonは現状 (2018-11-05時点)でもIssues 912件,Pull request 70件となっており,不具合や新機能の対応が滞っている。
この状態で,さらに次の2段階のステップを踏む必要がある。
これははっきりいってかなり困難だ。
もちろん自分でMastodonをForkしたりパッチを当てて新機能を実装することもできる。しかし,これは本体のコアな部分を触る必要があるので,実装自体が困難であり,本体のバージョンアップに追随するメンテナンスに多大な労力がかかるので,現実的ではない。
それもこれも,Mastodonがユーザーが自分で拡張する機構を用意していないからだ。今時,WebブラウザーのChromiumやFirefox,はたまたテキストエディター (Vim, Emacs, VS Code, Atom etc.) にすら搭載されているプラグイン機構のことだ。これがないがために,本体への新機能は開発者Eugenの気分次第だ。Mastodonはオープンソースの分散SNSのソフトであるが,結局のところは本体の開発体制は中央集権型だ。
先日,丁度これを象徴する発言があった。
友達と遊べなくて寂しくなったから,今日はMastodon 2.6.0を完成できなかったという内容だ。もちろんMastodonはEugenの所有物だ。あいつの思うがままだ。
プラグイン機能さえあれば,他に出た要望をMastodon本体に手を入れることもなく,自分たちで実装できる可能性がある。
同じ分散SNSであるGNU socialはプラグイン機能を備えている。そのため,やろうと思えば本体に手を加えなくてもユーザーで機能を拡張できる。プラグイン機能のおかげで,ActivityPubにもOStatusにすら対応しておらず,Mastodon,Pleroma,Misskeyですら対応できていないdiaspora*とも接続してコミュニケーションを取ることだって可能だ。
プラグイン機能の他には,TOMOKI++が強く訴えていたLTL関係の機能拡充が印象に残った。なんでも,作業で使うWikiのパスワードを流したりしたいので,LTLにだけ投稿するような機能がほしいとか。
ただ,LTLでもインターネットの全世界に公開していることには変わらない。検索エンジンでヒットすることも十分ありえるし,そもそも,そんなに秘匿性の高い情報をオープンな分散SNSに流すこと自体が間違いだ。そんなことがしたいなら,DMでやるかクローズドサーバーにして登録者だけで情報をやりとりすべきだろう。
そもそもLTLメインのサーバーは,MixiとかFacebookグループなどと大差ない。サービスを自分で所有できるので,外部サービスの終了に依存しないくらいしか利点がない。
ちなみに,GNU socialにはGroup機能がある。公開設定により,グループ内でのやりとりを非公開にもできるので,こうした秘匿性の高い情報のやりとりも可能だ。もっとも,この機能が他の分散SNSでも使えるか知らない。Mastodonにはユーザーによる拡張機能が存在しないので,プラグイン機能でGNU socialの独自機能を提供することも不可能だ。
結論
拝顔
当初の目的だったサバ管のご尊顔の拝顔は,一応達成できた。もっとも,把握できたのは登壇者とその他,「セキココ」に登録してくれた,意識他界系どうぶつ,みもりんかと,横での話をきいて判明したのえるくらいだ。
みもりんかさんは,帰宅してセキココを確認してから初めて把握した。発表後の質疑で積極的に質問していたのが印象的だった。かなり若く見えたので,何者なのだろうと思っていたが,なるほど。
あと,のえるさんは一瞥しただけだったがアイコンの画像が本人とそっくりでびっくりした。
発表全体
発表を一通りきいて感じたのは,タイトルにもつけた「LTLこそがMastodonの本質なのか?」ということだった。TOMOKI++にしても,とねぢにしても,LTLであったりテーマサーバーを肯定的に捉える意見だった。
実際ユーザーにとっても,テーマサーバーがそんなに魅力的なのだろうか。たしかに,自分の興味関心と近いユーザーと交流しやすく,+αでTwitter的に他のサーバーのユーザーとも交流できて,利点がわかりやすいのかもしれない。たしかに,お一人さまだと気の合うユーザーを自分で探すので手間ではある。しかし,これはこういうものであり,やはり自分でどうにかするしかないのではないだろうかな。
また,LTL関係の話題が出たことで,思いがけずGNU socialの良さを再認識できた。現状,TOMOKI++やぐすくまが望んでいるような秘匿性が高く,特定の話題に感心の高いユーザーを集める機能がGNU socialには存在する。ListとGroup機能だ。 自分にとっては,分散SNSとしてはお一人さまサーバーを立てて活発に交流することが重要なので,そこまで関心の高い機能ではなかった。また,そもそも GNU socialユーザーが少ないので活用もしていなかった。今後のGNU socialのアピールポイントの一つとしていいと感じた。
UIがだめとか,ActivityPubに対応していないとか,開発が活発ではないとかで叩 かれ,冷たい視線を浴びているGNU socialは不当に評価されており,とても不憫だ。しかしながら,UI面以外で備えている機能や拡張性はMastodonにはないものがある。不満があるならば,自分達でプラグインを作成し拡張すればいいだけのことだ。
正直なところ,自分たちの必要な機能を追加できないMastodonなど捨てて,GNU socialの開発を支援していくほうがお互いのためだとすら感じている。
会全体
分散SNSの流行も落ち着き,こうした集まりも貴重なものとなっている。開催されたのはとても良かった。遠路はるばる来訪し,登壇した方々もお疲れさまだった。
ただ,会全体の内容は良くも悪くも普通だった。アンケートにも書いたが, もう少しユーザーの関心の高い分野の話に焦点を当てて,会場が熱くなるような発表や,それらの発表内容に基づいたパネルディスカッションがあればよりよ かったかなと思った。パネルディスカッションはそれまでの発表の内容に関連した議題でやることが多い (逆か,パネルディスカッションの議論を深めるための発表か) のだが,今回はそういう感じがあまりしなかった。
例えば,運営費の話やLTLの是非の話,あとは分散SNS特有の不穏要素 (Mastodonの障害,事件,分散SNS上の有名人の登壇) などか。また,遠方からの来訪者もいたので時間も13:00くらい開始で,パネルディスカッションなどの時間に余裕をもたせて,長く楽しめたほうがよかったかもしれない。開催時間が短いのは,遠方の参加者の立場を考えると心苦しい。
そして,次回があるならば,Mastodon Meet Upではなく,実体がMastodonの話だけでもいいので名前をDistributed SNS Meet Upなんかにしてほしいな…。分散SNSにすることで,例えば,開発者が日本人であるMisskeyのsyuilo氏やYayakaプロトコルのryo33氏にも登壇を頼みやすくもなるだろう。名前からMastodonが消えたことで,Mastodon以外にもGNU social,Pleroma,diaspora*,などのユーザーも来やすくなるかもしれない。
この会で,サバ管の中の人のご尊顔を拝めて,LTLについて考え,GNU socialのよさを再認識できた。個人的には,Mastodonはあまり好きではないが,今後も同じ分散SNSの仲間として仲良くやっていきたい。
反響
記事の公開後に,この記事に対して言及があったので,参考までにリンクを掲載しておく。
- プラグイン機構は活発な開発者のかわりにはならない – 墓場人夜
- ユーザーディスカバリーメソッドは遍在し、そのアンフェアネスからは決して逃れられない – 墓場人夜
- 自分の気持ちをラクにする「中央集権」の考え方 – Komittee Express
ネット上での非対話的なやりとりでは,お互いの議論を深めるのは労力がかかる。そのため,思うところはあるものの,反論は控える。
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