2017-03-11にオープンソースカンファレンス(OSC)2017 Tokyo/Springに参加し,ライトニングトークで「デジュレ標準に従うべき理由」という発表を行ったので,参加・発表レポートを記す。

Information

まずは,OSC 2017 Tokyo/Springの基本情報を以下の表に記す。

Event information
Item Contents
Name オープンソースカンファレンス 2017 Tokyo/Spring
URL https://www.ospn.jp/osc2017-spring/
Hash tag #osc17tk
Location 明星大学 日野キャンパス 26号館 2F
Date 2017-03-11
Participants 1300

OSCはオープンソースソフトウェアに関するカンファレンスであり,2か月に1回ほどの頻度で全国各地で開催されている。京都で開催されたOSCには過去2回参加していた。東京では春と秋の年2回開催されている。3/10から3/11の2日間開催されており,3/11(土)に参加した。夕方のOSC最後のイベントであるライトニングトークで発表した。OSC Tokyoは初参加だった。

Material

ライトニングトークの発表資料を以下に掲載する。

Speech material
Item Contents
Title The reason we should confotm to de jure standard(デジュレ標準に従うべき理由)
Slide (PDF) https://senooken.jp/public/20170311/slide.pdf/
Slide (HTML) https://senooken.jp/public/20170311/slide.html/
Movie https://www.youtube.com/watch?v=911-qxM1Hbg
Movie (official) https://www.youtube.com/watch?v=3ouqUxA867k&t=49m30s

My speech

今回の自分の発表について,感想などを記述する。

Commentary

今回の発表タイトルは「The reason we should confotm to de jure standard(デジュレ標準に従うべき理由)」だ。日頃生活していて日付の形式や,英語での氏名の書き方,ファイル形式(拡張子)が人によってばらばらでもやもやしていた。さらに,表記の揺らぎによって意味や解釈が異なり,データの互換性という点でも問題の原因となる。

このような問題は,標準に準拠することが有効な対策となる。標準に準拠することで,人間の可読性と機械による可読性を担保できる。標準に従う実装がある限り,時空を超えて使い続けることもできる。ただ,標準といってもデジュレ標準とデファクト標準の2種類があり,デファクト標準は特定団体に依存することになるので危険だ。例えば,以下のリンクのように以前にもこのような内容で断片的に自分の考えを書き散らしたことがあった。

POSIX vs. TeX – Togetterまとめ

デジュレ標準は国際団体や公的機関により検討・改訂が重ねられ,人類の共有資産である。採用理由を他人に説明もしやすい。しかし,それを理解している人が身の回りにあまりいない。職場でも,自分より年上の人や上司など,特に意識していない。今までこうしてきたから,自分がよく使っているからといった具合にたいした理由もなく,選択されてしまっている。

直接指摘するにはある程度の信頼関係が必要であり,簡単ではない。現実のオープンソースのコミュニティとしても,TeXConf17やhtmlj,foss4gjなどのように,わざわざ標準からはずれる名前が付けられているものがよくあり,もやもやしていた。

今回の発表では,標準を意識していない人々に対して,標準に準拠することの重要さを提案できればよいと思って行った。1-2年ほど頭の中で考えていた内容だった。

さらに,丁度ここ1年ほどでPOSIX原理主義という,デジュレ標準に従うことを最大限に生かすことに着目した方法論を知った。もっと普及してよいと思ったので,後半部分はPOSIX原理主義について紹介した。もっとも,当日の発表はライトニングトークだったので,5分間の時間制限があり,スライドの20枚目のPOSIX原理主義の紹介の出だしでタイムオーバーとなってしまった。そのため,結局POSIX原理主義の紹介は失敗に終わってしまった…。

発表した感じだと,初っ端の日付の形式の例で「ああ」という声や,姓名の順番のCao Caoの例で笑いがおきるなど,聴衆の反応もあったので,まあまあよい感触だった。それだけに,最後まで到達できなかったのが悔やまれる…

Slide

今回のスライド作成では以下2点に挑戦した。

  1. 日英両対応
  2. W3C Slidyの使用

1. 前回,2016-12-10にLibreOffice Kaigiでの発表では,キーノートが外人ということで,できる限りスライド見出しを英語で書くことを意識した。世界に向けて情報を発信するには英語での文書化が必要となる。普段やっていないのにいきなり英語でスライドを書くことは不可能。そこで,練習も兼ねて英語でのスライドに挑戦した。もっとも,今回のOSCはほとんどが日本人の聴講者なので,日英両対応を心がけた。実のところ,今まで英語で文書を公開したことがなかった。外人にアピールする際の材料となった。今後も,スライドは基本的に英語または日英併記でやるつもりだ。

2. 前回のShower,前々回のRevel.jsに引き続いてCSS組版の探求として,W3Cスタッフが開発したSlidyというスライドライブラリを試した。SlidyはW3Cがスライドツールとして2005-05時点で推奨していたり,AsciiDocPandocの出力形式として対応されており,注目していた。

使った感触としては,HTML5以前に作られたスライドツールとしてはかなりいいほうだと思った。結局のところ,最後は自分でCSSの調整が必要なのだが,既存のHTMLをスライドにする場合もh1要素を</div><div class="slide">に置換すればよいので,使いやすいだろう。ただ,ShowerやReveal.jsなどHTML5を使えるスライドツールがあるのでそちらを使ったほうがいいようにも思えた。やはり,意味のないdiv要素を使うのはセマンティクスに反するので良くない。

その他,色を取り入れて見た目をよくすることに少し気を使った。

Reflection

今回の発表で反省だったのが,時間以内に発表が終われなかったという点だ。大きく心当たりがあるのが,以下2点だ。

  1. 文量がやや多かった
  2. モニターの設定がうまくできていなかった。

1. 今回の発表スライドは全部で23枚だ。5分で終わらせるなら,1枚13秒くらいのペースとなる。言葉でちゃんと説明するならば,早口で行う必要があり,余裕がない。時間制限がきたら強制的に終了となるため,安全にみるならスライドは20枚くらいに収めて,5分ぎりぎり使うのではなく,余裕を持って4分30秒くらいまでには終わるようにすべきだった。

2. モニターとプロジェクターの画面複製の設定が反映できていなかったので,スライドの内容・進捗状況をみながら発表ができず,スムーズにできなかったのが原因だった。設定できたと思っていたが,適用ボタンを押下するのを忘れてしまっていた。発表するときは,事前に自宅で画面複製の設定をして,直前になって慌てないようにしたい。

また,直近2-3回の発表ではCSS組版の探求として,HTMLでのスライド作成を試みている。毎回違うライブラリ(Reveal.js,Shower,Slidy)を使っているため,その都度使い方を学習する必要があり,前回の資料を使い回すことができず,時間効率が悪い。また,コンテンツの配置や色・文字装飾などなかなかうまくいかず,結局毎回徹夜に近い状態での資料作り→発表の流れとなっており,イベントを楽しむ余裕がなかった。さらに,発表後にSlideShareに公開するPDFの生成も,それぞれ方法やレイアウトのずれが違うので,その調整も必要で手間だった。

3回試してみてわかったところがあるので,次回は楽になるのではないかと期待している。

Impression

カンファレンス当日に寝坊してしまい,到着したのが15:00頃だったので,聴講できたのは1セッションだけだった。聴講したのは以下のセッションだった。

オープンソースカンファレンス2017 Tokyo/Spring – イベント案内 | 2017-03-11 (土): 現役IT担当者が語る! 中小企業のIT化には見える化と共有化しかない!!

中小企業において,どのようにITを活用していけばよいのか,講演者の失敗談に基づく話だった。かなり柔らかく話されていたが,実際のところは厳しい現実の話だと思った。

ITを導入しても,業務フローを改善しないとどうにもならないところがあり,欧米やITの分野で取り入られている分析手法は日本の文化とあわないところがありなかなか浸透が難しい。データ分析に取り組んでも上層部に理解を得られず,頭でっかちとの批難を受けるなど,講演者の長年の苦労が目に浮かぶようで,明るく面白おかしい話し方とは異なり,中身は努力してもなかなかうまくいかないという暗いものだった。

従業員一人一人の利益につながるようにうまく誘導すること,つまりマネジメントがとても大事だと話されていたのが印象的だった。

具体的にすぐ何かの役に立つようなものではないが,いい話がきけてよかった。以下の参加レポートも参考になる。

それは中小企業の総務係の悲痛な叫びだった…? : センチュリー・大橋 モバイラーズ・ライフ

Summary

OSC 2017 Tokyo/Springのライトニングトークで「The reason we should confotm to de jure standard(デジュレ標準に従うべき理由)」という題で発表した。Slidyや日英両対応など,スライド作成としては新しいことに挑戦できてよかった。

しかし,発表が5分で終わらなかったのは,反省点だった。また,カンファレンス自体をほとんど楽しむことができなかったのが残念だった。これに懲りずに,次回は余裕を持ってスライドを作り,またリベンジしたい。