#texconf14 TeXユーザーの集い2014のLightning Talk (LT)で「TeXはオワコンなのか?」という題で発表した。TeXや今回の集まりについてネガティブなことが多いが,感想や自分の発表について記録する。少し長いよ。

概要

イベント情報
項目 内容
イベント名 TeXユーザーの集い2014
URL http://texconf14.tumblr.com
ハッシュタグ #texconf14
開催地
開催日時 2014-11-08
参加人数 126
発表資料
項目 内容
演題 TeXはオワコンなのか?
スライド https://senooken.jp/public/20141108/slide/
動画 https://senooken.jp/public/20141108/movie/

感想などを書いていく。

今回のカンファレンスでの収穫

  • Vivliostyleの開発スケジュールを聞けた。
    • 2015年の春にα版、夏にβ版を出すのが目標。秋のカンファレンスで発表したいみたい。
  • Re:VIEWの開発者にWikipediaにページを作成するようお願いした。
  • Markdownが普及した理由がわかった。
    • GitHubの記法に採用されたから。

感想

個人的にはあまり得られるものはなかった。正直なところもうTeXへの興味はあまりない。TeXの話とかされてもあんまり有用だとは思わないし,ネタもあん まり面白いと感じなくなってしまった。

なんか身内ネタとかそういうのやりすぎるとクローズドな感じになるからあんまりよくないと思う。

たとえば,最初の発表のLuaTeX-ja。

この発表ではLuaTeX-jaプロジェクトの経緯やその意義について一切説明がなく,いきなり開発状況について淡々と説明するものだった。発表者の人は学 術関係の人だと思ったけど残念だった。研究ではきちんと背景をかいて,その研究の意義について訴えるものだと思っている。そうでなければ研究費なんかとれない だろうし,役に立たない研究になんの意味があるのだろう?

LuaTeX-jaも同じ。役に立たないプロジェクトなどやる意味がないし,やるからにはその必要性を訴えていくべきだと思う。

ルビの標準化の話。

普段ルビを使わないのであんまり自分には関係ないと思った。なんかDOM木の解析方法とか面倒くさそうと思った。結局JavaScriptはなんでもできる のでこれで解析してやるとか。ルビは日本語で組版する以上必要だし,よかったと思う。ただ,なんかあんまり実装が進んでいないようでなんだかなと思った。

TUG2014参加体験記

海外でのTeXの活用例などを紹介していて少し面白かった。しかし,やっぱりTeX。TeXの限界を知った以上,優れた技術などがあってもTeXに縛られて いるのでそれ以上の関心を寄せることはない。

書籍向けのマークアップについてInDesignとTeXの比較などの話。

マークアップの分類や思想などが参考になった。Re:VIEW+InDesignの最初の本が独習 Java 第4版という始まりをしれてよかった。

CSS組版の話。

個人的に一番期待していた発表。ただ,スライドは事前に公開されていたアブストラクトとほぼ同一で新しく得られた知識は少なかった。個人的には,CSS組版 とその周辺第1回のときのような情熱的な発表を期待していたのだけど,なんだか冗長で進行もゆったりとしていて見ていてだるくなる発表だった。残念。 VivliostyleプロジェクトとしてはJavascriptのライブラリをベースにしていろいろやっていくみたい。

僕はJavascriptについて何も知らないのでなんともいえないのだけど,外部ライブラリに依存するのは大丈夫なのかなと思う。たとえば,数式の MathJax。ネットで公開されているライブラリをインクルードして使う場合,ネット環境が必須になる。かといってローカル環境にインストールして使う場 合,そのインストール場所との位置関係の縛りが出てくる。たとえば,Dropboxにhtmlをいれて複数のOSで編集する場合などで問題になるのではない か。かといって,htmlを同じディレクトリに入れる場合文書ごとにMathJaxをインストールする必要があり,容量が無駄に大きくなる。本体のHTMLに 全て1行で書き込むのがコンパクトでいいと思うのだけど,複数に分かれているとそれもしんどいし。できれば数式はMathMLを直接操作するのがいいと思うの だけど。うーん。

懇親会

5000円の割に料理があまり食べれなくて割高な感じだった。VimConfでは参加者全員に1000円の参加費を徴収して,懇親会の費用も含んでいるよう だ。全員からお金を少しとるか,一部の人から多く取るのかの違い。まあ門戸を広げるには後者がいいか。

二次会の代金も含んでいたのかな。こういう発表をしたのもあり少しいたたまれない気持ちになった。別に悪いことをしたとは思っていない。他の人がどういう印 象を持っているのかは気にはなるが,自分から感想をききにいく勇気はさすがにない。よかったといってくれる人もいて嬉しかった。

自分の発表について

今回のTeXユーザーの集い2014では自分が発表することが大事だった。スライドにも書いたので一部重複するが,適当に思うことを書いていく。

僕はTeX歴3年だ。TeXユーザーとしては短いほうだろう。2012年の夏に,大学院でこの先文書をなにで記述していくかというのを悩んでいた。その時の選択肢は以下三つだった。

  • TeX
  • MS Word
  • LibreOffice Writer

MS Wordは不自由だから使いたくなかった。かといって,Writerは機能が少ないし,これで参考文献や引用・数式がうまくできないし,論文をかける気がしなかった。ということで,TeXしか選択肢がなかった。TeXに自分の将来を預けるつもりでTeXを使い込んだ。といっても,僕はTeXの直書きはしんどくて嫌だったのでLyXという優れたGUIエディタを使った。CSS組版を知らなければ,おそらく今回はLyXの紹介の発表をしていたと思う。

学生の身分を利用して図書館で片っ端からTeXの本を借りてどれがいいか読んだ。休日はTeXのパッケージを調べたり,パッケージのマニュアルを読んだり,今まで使っていなかった機能(たとえば,フッターとか表紙のカスタマイズ,hyperrefの便利な設定など)をいろいろ試していた。

\expandafterはなんか日本の一部のTeXユーザーで面白がられているけれど,はっきりいって僕には何が面白いのか理解不能。\expandafter自体も別にそんな面白いような機能だとは思えないので特に調べようとも思わなかった。それよりも,余白などの設定やドキュメントクラスごとに設定を変える(Beamerだけ目次やSectionのカスタマイズをしない)というようなマクロを書くことが面白かった。自分の文書がどんどん高機能で,作業効率が改善されて,綺麗になっていくのが面白くてはまっていた。

TeXを極めれば何でもできると思って,BeamerやXy-pic,TikZなどもやってみた。いろいろ自分なりにTeXの機能を試してみた。

しかし,TeXの限界を感じてしまった。大きく以下だろうか。

  • 他人との共同作業
  • 図表
  • デバッグ

研究室では僕だけがTeX,しかもその中でLyXという純粋なTeXとは外れたソフト・形式で文章を書いていた。当然,誰かと共同作業するときに問題になる。就職してからもTeXを使うことはそんなにない。自分一人で完全に閉じるならば別に何を使おうが自由だ。ただ,他人とやりとりする場合はやはり配慮が必要だ。結局TeXを使う場面は少なくなり,TeXの知識も生かせなくなり無駄になる。

また,LibreOffice WriterのようなソフトはTeXよりも優れているなと思うところがあった。それは図表(特に図)だ。結局TeXを含むマークアップは基本的に画像を別の場所から参照して取り込む。これをすると,たとえば昔の文書のある部分を流用しようとすると,以下のようにする必要がある。

  • ソースコードを開いて,
  • 該当箇所を探して
  • 該当する図のファイル名を探して,
  • そのファイルと該当コードをディレクトリ階層を維持して
  • コピー

はっきりいってこれは自分には面倒すぎる。これは過去の文書だけじゃない。たとえば,Web上の記事をコピーペーストして自分の文書に取り込む場合も同じ。コピーするとテキスト部分しかコピーできず,装飾や図表を反映できない。その点,Writerなどは普通にコピーペーストでだいたい終わる。この利便性はなんともしがたいものがあった。

また,中間発表などで図表や参考文献,相互参照などをふんだんに使うとだいたい意味不明なエラーに出くわす。特にBibTeXのエラーは意味不明で何回も泣 きそうになった。提出間際にエラーを解決するために半日から1日かかることもけっこうあった。はっきりいってこんなデバッグするよりかは内容に集中したい。本 末転倒だった。そうは思いながらもTeXでやると決めていたし,相互参照とか文献引用を他のソフトでやる場合の苦労も嫌だったのでいやいややっていた。

こうした苦労を経験して,TeXを使うのに疲れた。TeXを使って将来なんの役に立つのだろうか。TeXはこの先将来があるのだろうかと考えることが多く なった。もやもやしたまま,とりあえずLibreOffice Writerに乗り換えた。

ただ,LibreOffice Writerよりかは自分にはLyXのほうが使いやすかったし,数式や数式番号・相互参照などなんかいまいちでWriter もなんだかなとは思っていた。

そんな悶々とした日々を過ごしていた中だった。6/22のCSS組版とその周辺 第1回勉強会 (http://connpass.com/event/6835/) で初めてCSS組版を知った。今回のカンファレンスで発表された村上さんがCSS組版につい て発表していた。W3Cの動向や利用例からCSS組版は将来の標準になる可能性が高いと。個人的には村上さんが「難しいTeXなんかじゃなく,世界中の誰でも 自由に組版できるようになればいい」というようなことを情熱的にいっていて,TeXに限界を感じてどうすればいいか悩んでいる僕は共感した。

そしてCSS組版を信じることにした。HTML+CSS+Javascriptは何も知らなかったので一からの勉強のし直しだった。というか今もほとんど理 解していない。ただ,やっぱり僕にはHTML直書きは苦行だった。LyXやWriterのようなWYSIWYGなエディタが必要だった。なので片っ端から調べた。http://myfuturesightforpast.blogspot.jp/2014/09/18wysiwyg-html-amaya.html

それで見つかったのが,AmayaとBlueGriffonだった。インストールしてすぐに,どちらも非常に優れていると思った。ただ,AmayaはBASE64の画像の貼り付けと表示に非対応だったのでBlueGriffonを使うことにした。BlueGriffonはアドオン(数式エディタ)が有料など気に入らない点はあるのだけれど,現時点でこれ以上のものはないのでしかたない。

TeXは好きだったし,組版(文章をかくこと)は世界中の人間が抱える重要な問題だと思った。もっとCSS組版が広まるべきだと思ったので今回発表した。TeXの悪口や問題点を批判するならば,有識者のいる場所でどうどうと行い,どう思っているのか議論するべきだと思っていた。影でこそこそ批判しても何も意味はない。また,批判に対して適切に答えることができなければ,いずれゆっくり利用者が減って腐って死んでいくだけし,そうであればはっきりと決別できる。ユーザーのいる場所でどうどうと批判するのは少し気も引けるが発表した。TeXユーザーがTeXの将来についてどう思っているのかも気になっていた。自分たちが使えるから,というのでユーザーの拡大をどうしていくかというのはあまり関心がないのだろうか。あまりそういう態度をとっていると,本当に孤立してしまい後々自分たちが困ることになると思うのだけど。

同日行われていたVimConf2014では他のエディタのシェアの拡大などユーザーを増やしていくためにどうすればいいかを考えて発表している人がいたようだ。こういうのを見習うべきなんじゃないかと思った。

今回の発表は僕の中で2014年後半の最大の勝負どころで,発表するにあたって,かなり自分なりに頑張ったつもりだ。今までの勉強会の発表資料では量は一番多かったし,8月頃に構想を練り始め,10月初めに大枠を作り直前までねっていた。すかすかな内容ではなく,後々の資料としても使えるように情報を詰め込んだ。一部のアイコンのライセンスが怪しかったので,スライドにCC BYのライセンスをつけるのは控えた。休日を数日費やしている。冒頭に検索数のグラフを入れたのは直前の休日の思いつきだった。最初は自分の考えだけで行こうかと思ったが,やはり客観性が必要ということで調べて載せた。あとは,もう少し自分の意見の正当性を高めるためにTwitter上の発言を調査して引用した。

僕は何が正しいか・これから何をすべきかを探している。正しいかどうかの判断は難しいが,大学院での勉強から,自由に誰でもそれが正しいかどうか検証できること,つまり自由ソフトが正しいと思っている。自由ソフトを極めるつもりだ。自分のことをアピールして,共感する人や協力してくれる人,師匠を見つけたいと思っている。そういう意味で自分の将来がかかっていた。

発表中はPCのモニタをずっとみていた。時間がギリギリになるとわかっていたので,スライドの内容は簡単に触れてどんどん進めていった。発表中けっこう笑いが起きた。けっこうきつい感じの口調だったので,場が緊迫した感じのなんだか具合が悪い感じになるのではないか,雰囲気ぶち壊しになるような感じになるかなと思っていたので予想外だった。気分を悪くする人はたぶんいたと思うが,どうだったのだろうか。個人的には運営の人とか重鎮の方々がどう思うのか気になるが,あまり声や感想を聞かせてもらえなかったということはそういうことだったのかな。批判する自由もそれに対して怒る自由もあっていいし,それが自由で正しいと思っているので別にそれは問題ない。

発表後スライドを公開するとけっこう反響があったようで,けっこうTwitterでスライドをツイートしてもらえている。公開後2日でスライドの閲覧数がすでに今まで公開していたスライドの閲覧数のトータルを超えて2500くらいの閲覧数となっている。CSS組版やAmaya,BlueGriffonの知名度が上がればいいかな。タイトルが扇動的なのが原因かな。まあ,今は無名の一般人なので,いろんな人に助けてもらうためにも目立つことも大事だ。

スライドの配色なんかはけっこうBeamerを参考にしている。自分の中でTeXは全くの無駄だったわけではない。TeXGyreフォントやJabRef,文章の書き方など得るものはあった。ただ,TeXには未来があるのだろうか?TeX本体はもう機能更新しないことを宣言していることから,画像のBASE64埋め込みの対応は絶望的だし,表組みの制御がしんどいのもたぶんどうにもならないのだろう。

現時点ではTeXのほうが機能的に優れているだろう。それでも将来のないTeXよりは,僕はCSS組版を信じる。可能ならVivliostyleプロジェクトにも貢献したいと思っている。ひとまず,JavaScriptを勉強してBlueGriffonの拡張機能の作成が目先の課題かな。頑張ります。