書評☆3 躍進するコンテンツ、淘汰されるメディア | Netflixの躍進とそれを取り巻くテレビ,通信,メディアのこれまでと展望

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概要

KADOKAWA会長の角川歴彦による「メディアの興亡」三部作の第三部となる。

内容は,動画配信業者として躍進するNetflixをメインに,これまでの日本のテレビ,通信,メディア,それとApple,Google,Amazonのメディア関係の取り組みを振り返り,今後の展望について書かれていた。

Amazon.co.jpで「マストドン」のキーワードで検索してヒットしたので,Mastodonについてどう言及されているのか気になって読んだ。

しかし,本文中にはMastodonや分散SNSの話題は一切ない。おそらく,この本の出版を記念した以下のセミナーと連動して,専用のMastodonサーバーが設置されたので,ヒットしたのだろう。

INIAD坂村健×KADOKAWA角川歴彦が語るコンテンツとIoTの「再定義」 – 週刊アスキー

例えば,AmazonのKindleの失敗,Google TV,iTVの失敗などを上げて,既存のテレビ事業の体制の古さやデバイス戦略の成功・失敗など,著者の洞察が述べられており参考になる部分はあった。

参考

p. 18: ネットフリックスの登場

それでは、動画配信のモノポリー者となるネットフリックスとは、どのような会社なのだろうか。もともと彼らはレンタルビデオ会社からスタートした。1997年に創業したが、顧客の家にDVDを宅配するという新しい発想でなかなかの人気が出てレンタルビデオの大手になった。

ネットフリックスがどのように登場してきたのかがわかった。

p. 30: 前駆者のHuluとの違い

彼ら以前にも動画配信業者はいくつか存在した。Huluはその一つである。だが,先行者は映画会社やテレビ局のサービスの一環として補完的役割を担って創業した。だから伝統的なメディアとは友好的な関係を結びその意に反するような改革はしない。

Netflixと既存動画配信業者との違いが説明されていた。

p. 192: 成長産業などない。経営の良し悪しは経営者の双肩にかかっている

セオドア・レビットは事業衰退の原因は経営の失敗にあるとし、その例としてアメリカの鉄道会社のケースを挙げている。

「鉄道が衰退したのは、旅客と貨物輸送の需要が減ったためではない。それらの需要は依然として増え続けている。鉄道会社が危機に見舞われているのは、鉄道以外の手段に顧客を奪われたからでもない。鉄道会社がそうした需要を満たすことを放棄したからなのだ。鉄道会社は自社の事業を輸送事業ではなく、鉄道事業と考えたために、顧客を他に追いやってしまったのである。事業の定義を誤った理由は、輸送を目的と考えず、鉄道を目的と考えたことにある。顧客中心ではなく、製品中心に考えてしまったのだ」

事業の衰退の原因が何なのか参考になった。

p. 202: モノポリー者の脅威

モノポリー者の脅威の実態を僕に余すところなく伝えてくれたのは、MITメディアラボ所長の伊藤穰一君だ (『グーグル、アップルに負けない著作権法』)。

「モノポリー者というのは、ちょっとした権利をいかにレバレッジにしようかと一所懸命、上手に考えている人たちばかりです。

アップルのデバイスの中には、アップルのものではない特許がたくさん入っている。でもアップルが凄いのは、彼らが一番設けている。なぜかというと、ブランドとエコシステムのコントロールを牛耳っているから。


みんな視点が間違っていると思うけど、クラウドの世界、時代になると、強者は物や権利を持っている人たちじゃないんだよね、YouTubeみたいに、トラフィックとブランドを持っている人が強い。


今の世の中というのは、いかにプラットフォームを作るか、ディストリビューションを持つか、ユーザを持つか、そういうところに力が移っちゃっている。

モノポリー者の考え方が少しわかった。

結論

メディア産業で50年以上勤めている著者による,ここ10-20年のメディア大再編について,洞察と展望が述べられていた。メディア産業に勤めているものには参考になるところがあるかもしれない。

ただし,けっこう細かい内容もある。例えば,NHKとかNTTの通信や放送に関する国とのやりとりや歴史の話など。このあたりはあまり面白くなかった。

個人的にはMastodonに関する記述がなかったのが残念だった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/02/13/

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