書評☆4 IoT時代のプラットフォーム競争戦略 | JavaとVMwareの事例を元にした読み手に知性を要求するプラットフォーム戦略解説

概要

クラウドサービスや,今後も進化が見込まれるIoTにおいて,プラットフォーム製品戦略が重要度を増してきている。本書では,JavaとVMwareの事例を元に,プラットフォーム製品戦略を解説している。

書名に「IoT時代の」とあるが,内容はプラットフォーム戦略についてのものであり,IoTに特化したものではない。ただし,内容が汎用的なものなので,IoTにも十分通じる。

この本で良かったのは以下2点だ。

  1. JavaとVMwareの戦略の解説
  2. JavaとVMwareの戦略を元に,プラットフォーム戦略の一般化

まず,プラットフォーム戦略の事例として,JavaとVMwareをとりあげ,それぞれの製品がどのようなことをやっていたのかを整理していた。

JavaもVMwareもIT分野では成功した製品であり,どういう経緯があったのかを知ることができたのは,単に教養としても良かった。

それぞれの製品では,共通してWindows (Hyper-V) がプラットフォームの競合となった。これに対して,どのような戦略でどこで収益を上げていたのかまで解説していて参考になった。

続いて,これらの2製品を元に,プラットフォーム戦略としては具体的にどういう戦略をとっていけばいいのかを導いていた。ここで導かれた内容は,プラットフォーム戦略として一般的に通用する内容だったので,IoTなど他のプラットフォームへの展開も可能と感じた。

著者がビジネス寄りの学者であり,本書も学術的な面も重視していたので,前半部分は内容が固くて読みにくかった。しかし,後半部分については具体的な内容や戦略が解説されていた。そのため,前半で書かれていた概念なども戻って読むことで理解できるようになった。

その他にも,プログラムやコンピューターの起源についてもまとまっていて,IT技術者の教養としてもよかった。

参考

p. 11-17: 第1節 コンピューター・ソフトウェアの階層化の時系列整理

p. 30: 脚注

コンピューターの起源についてまとまっていて参考になった。

p. 53-83: 第4章 後発プラットフォーム製品提供者の操作項目,第5章 推論によるドミナント化モデルの提示,第6章 階層介入戦略と位置付け

前章と同じく先行研究レビュにより,プラットフォーム製品のドミナント化の要因に影響をもたらす後発プラットフォーム製品提供者の操作項目として,アクセス可能ユーザー数の増加,マルチホーミングコストの低減,隣接対象プラットフォーム製品の多数選定,持続的収益確保モデルの遂行,の4つを提示する。

プラットフォーム戦略を行う上で,サービス提供者が操作可能な項目についての整理,プラットフォームの支配下モデル,他のプラットフォームへの介入戦略方法のモデルを解説しており,考え方が参考になった。

p. 62: 第2節ドミナント化のモデル

ここでは先行研究から導かれた後発プラットフォーム製品におけるドミナント化のモデルが図示されている。いわれてみれば,当然のことが書かれているが,これを図示して形にしているというのが重要だと感じた。

p. 118: 解説4 シリコンバレーと企業創出システム

シリコンバレーが最先端のIT企業の集積所として有名だ。なぜシリコンバレーがこうなっているのかを解説していた。端的にいうと,人材,技術,資金が密集しており,これらが循環しているからだ。

p. 169: 第8章 事例から導かれた新たな効果や現象

Javaの事例とVMwareの事例の操作項目の観点での分析ならびに確認から,導出される階層介入型プラットフォーム製品特有の戦略に関する仮説は以下である。

  • 仮説3-1: コモディティ化の誘発
  • 仮説3-2: 延命の助長
  • 仮説3-3: 包囲されにくい防衛策
  • 仮説3-4: バンドルの分断

この章では,JavaとVMwareの事例を元に,4の操作項目が何であったのかを整理 (p. 174: 第2節 戦略の示唆) しており,参考になった。また,JavaとVMwareの事例から,戦略上の示唆・仮説が出されており,これがとても参考になった。

p. 183: インプリケーション6 IoT時代のプラットフォーム競争戦略

戦略策定担当者は,現状の自社のプラットフォーム製品の市場での状況を鑑み,慎重に戦略をねらなければならない。なぜなら,本書でこれまで説明した隣接プラットフォーム製品との「相互接続」によるアクセス可能ユーザーの流動性が,有意性を強めたり弱めたりするためである。

いよいよ書名にもあるIoTについてのプラットフォーム戦略についての解説だった。ここまでで,プラットフォーム戦略について解説されてきれいるので,これらを念頭に戦略を練る。

また,ここだけでなく1-6の全インプリケーションは全て示唆に富んでおり参考になった。

p. 190: 参考文献

本文中で参照された文献72点の引用元が記載されている。引用文献が多ければ多いほどいいというものではないが,参考になった。

結論

書籍の序盤は専門用語が出てきたり,固い文体で読みにくかった。しかし,後半にいくにつれて内容が理解できるようになった。コンピューターやプログラムの始まりから,世界を変えたJavaやVMwareの事例の解説など,教養としても参考になる内容だった。

この本の有用性を理解するには,ある程度の知性が必要だ。しかし,この本の内容を理解できれば,プラットフォーム全般に対して良い戦略を立てることができる。マーケティングなど会社の上層部で意思決定力のある人が活用すると効果が大きい。

ビジネス書はあまり興味を持たないが,この本は手元に置いておきたいと思える内容だった。

パーマリンク: https://senooken.jp/post/2019/01/03/

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