書評☆4 多様な派遣形態とみなし雇用の法律実務 | 豊富な判例・条文を掲載した派遣問題に必須な1冊

概要

書名の多様鼻件形態として派遣・請負・業務委託・出向・協業などの労働形態に関して,制度の説明と問題点を解説している。

弁護士により書かれており,豊富な判例・条文が掲載されており,この分野の本では最も詳しいだろうと感じた。文量も530ページと十分ある。値段が5400円と高いのも納得の内容だった。

判例・条文が掲載されているだけあって,内容はやや難解な書き方がされているので注意が必要だ。

制度が制定された背景,経緯が解説されており,なぜ禁止になっているのか,なぜ変わったのかという部分も分かるようになっている。これは大きい。

例えば,「二重派遣がなぜ禁止されているのか?」という問いに対して,「職業安定法44条により,労働者供給事業に該当するから」という明確な回答がある。そして,「なぜ労働者供給事業がだめなのか」というと,「労働者の搾取にあたるため,無料で行い国の許可が必要な事業だから」という回答に辿り着くことができる。

多くの書籍では,一つの問題に対して,せいぜい1個の回答までしか用意されておらず,それを深堀した根本原因までは説明されていない。

また,本文内では業務委託契約書の事例を出して,その契約書の解説も行っていた。

現在SES企業に勤務しており,この労働形態に疑問を持っていた。この本のおかげでこの労働形態の大部分において,正確な知識が得られると感じた。

参考

pp. 4-6: 労働者派遣法の目的と問題点

労働者派遣を司る労働者派遣法の経緯が,労働白書や文献を引用して掲載されていた。

pp. 17-26: 4 職安法の労働者供給事業禁止と労働者派遣法との関係は

二重派遣の禁止根拠となる労働者供給事業と労働者派遣法との関係が書かれていた。なぜ労働者供給事業が禁止となっているのかについて,文献や過去の判例を元に解説しており,信頼性が高い説明だった。

pp. 55-109: 第2部 第1章 労働者派遣と請負・業務委託等をめぐる問題

この章は主に偽装請負について取り扱った章だった。ただ,なぜ偽装請負が発生するのかという点の説明が弱く ,背景が理解しにくい部分だった。具体的には,派遣法等の規定の適用を免れるためなのだが,派遣だと安全管理の配慮や責任が発生して面倒くさいということがわかりにくい説明だった。

偽装請負に関しては,以前書評を書いた「偽装請負」も併せて読んだほうが,理解が深まるだろう。

pp. 323-357: 第2部 第5章 いわゆる二重派遣的形態をめぐる問題

SESの業態で問題になり得る二重派遣について解説された章だった。二重派遣になるケース,なぜ二重派遣がだめなのか,逆に二重派遣を回避するケースなどが詳しく書かれており参考になった。

結論

平成27年に導入された「労働契約申込みみなし制度」により今後発生する問題とその対応までを詳解しており,裏表紙にある通り,他に類のない量と詳しさの実務解説書だった。

違法労働で働かされている労働者にとっても,裁判で戦う場合の武器となる知識が得られるとてもよい本だった。

ただ,やや難解であったり,理解が難しい分もある。この本ともう1冊ほど補助教材があればよいだろうと感じた。

本書と「偽装請負」を所持しておけば,偽装請負や二重派遣問題については十分な知識が得られるだろう。

法改正に伴い,今後も変更はあるだろうが,この本で基本的な背景・概念を押さえておけば通用すると感じた。

手元においておきたいと思えるいい本だった。

なお,本書はこの本の元となった「労働者派遣と請負・業務委託・出向の実務」の内容をほぼそのまま含んでいる。

本書との大きな違いは,「労働契約申込みみなし」に関する情報の記載だ。このテーマで100ページ程度内容が増えており,その他,地方自治体への労働契約に関するテーマが存在する。

偽装請負や二重派遣について知りたいだけであれば,旧著でも問題ないだろう。

パーマリンク: https://senooken.jp/blog/2019/09/30/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です