書評☆4 謙虚なコンサルティング | 支援を実現するための3レベルの人間関係

概要

人を助けるとはどういうことか」,「問いかける技術」に続く,支援に関する本だ。

社会が複雑化するにつれ,クライアントもコンサルタントも問題も解決策もわからなくなってきている。そのため,従来のコンサルティングで問題を解決するのが困難となってきている。これに対して,謙虚なコンサルティングと著者が提言する新しいコンサルティングの形を解説している。

特徴は,人間関係を3のレベルに分類し,このうち個人的な知り合いであるレベル2の関係構築が,複雑な問題で必要であることを主張しており,その事例について紹介している。

他の前半部分で,今回提言した理論の背景や考え方について説明しており,後半からは過去のコンサルティング経験の事例も出しながら,ポイントを解説している。

前著,特に「人を助けるとはどういうことか」の内容がこの本でも関係してくる。

レベル2の関係を念頭に置きながら,やはり謙虚な問いかけによりクライアントと信頼関係を構築し問題解決に取り組む。その場その場で質問を考えたりする必要はあるが,やり方としてはこれ以上のものはないだろうと感じた。

参考

p. 49: 謙虚なコンサルティングはどのように新しいのか

「コンサルティング」という言葉は昔から次のような意味で使われてきた。専門的情報やサービス、診断、処方箋を助言という形で提供しながら、しかし、ほどよい距離感をしっかり保つことによって、「専門家および医者 (あるいはどちらか一方) としての役割を担って支援する」ことである、と。そうした役割は、問題点がはっきりしていて技術で解決できる場合はうまく果たせるかもしれないが、だんだんよい結果を生まなくなってきている。「問題」が何であるかが曖昧で、どんなことをすれば本当に役に立つのか、支援者がわからなくなってきているためである。

このことは本当にそのとおりだ。技術が発達し,世の中が進化・複雑化するに連れて,問題自体とそれに対する適切な解決策が何かわからなくなってきている。この説明で,著者が主張する謙虚なコンサルティングの必要性を納得できた。

p. 64: 人間関係とは何か。信頼する、率直であるとはどういうことか

私たちは、「人間関係」「信頼」「率直さ」という言葉を、深く考えることなく頻繁に使っているーまるで、その意味を理解できない人などいるはずがないと思っているかのように。しかし、これら三つの言葉について定義してほしいと頼んだら、呆気にとられたような顔をされるか、何を今さらと見下した眼差しを向けられゐか、あるいは、尋ねたほうも答えたほうも納得できない、あやふやな定義をされるかのいずれかである。


「人間関係」とは、過去の付き合いに基づいた、互いの未来の行動についての、一連の相互期待へのことである。

もし私があなたの行動のいくらかをほぼ予測でき、'あなたも私の行動の一部を予測できるなヘへら、私はあなたと関係があるということになる。関係が浅い場合は、互いに相手の行動をおぼろげに予想できる程度だが、関係が深い場合には、二人のどちらもが相手の考え方や感じ方や価値観を承知している。


相手の反応の仕方を互いに知っているという感覚に基づく安心感、合意した目標に向かってともに努力しているという安心感である。そういう安心感を、ふつう「信頼」という言葉は意味している。

人間関係や信頼という言葉を知らない人はいないだろう。しかし,本当のところこれらの言葉が何を指すのか自分も考えたことはなかった。著者によるこの定義は的を得ており,なるほどと納得した。

p. 67: 文化的に定義された関係と信頼と率直さのレベル

  • レベルマイナス1 ネガティブな敵対関係、不当な扱い
  • レベル1 認め合うこと、礼儀、取引や専門職としての役割に基づく関係
  • レベル2 固有の存在として認知する
  • レベル3 深い友情、愛情、親密さ

本書でキーとなる人間関係の3のレベルについて解説されていた。一般的な社会ではレベル1の関係であることがほとんどだ。そして,レベル1の関係は,問題とその対策がはっきりとわかっている場合には有効だ。ただし,非常に多くの複雑な問題はレベル2の関係が必要となる。逆に,レベル3は組織では馴れ合いやえこひいきなど問題となることが多い。

結論

理論的なところが腑に落ちて納得できた。

著者の他の本と同じで,結局は謙虚な問いかけによりクライアントとの信頼関係構築が重要という点では同じだが,視点が異なる。

こういった新しい視点を知ることができたのがとてもよかった。

2000年代後半以降の著者の本は読みやすくて,いい本がよかった。

パーマリンク: https://senooken.jp/blog/2019/05/07/

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