書評☆3 AI/IoT特許入門 | 「特許はスピードが命である。まずは、IoT、AIを用いた基本コンセプトを出願することが大事である。」

概要

AI/IoT発明による先進企業の特許事例を元に,権利化のコツを解説している。

特許についてあまり考えたことがなかったので,他社の事例や考え方など参考になった。

紹介事例の特許を理解するために,最低限のAIの知識についての解説もあり,よかった。

実際のところは,社内の専門家と相談しながらになると思うが,先進的な製品開発を行っているのであれば,知っておいても良いと感じた。

参考

p. 53: 第3章 各国のAI特許動向

第4次産業革命を受け特許庁も適切にIoT及びAI発明を保護すべく2017年3月iloT関連技術の審査基準」を公表した。


とりわけ注目すべきは、 下記の請求項(以下、 クレームともいう)の形態であってもプログラムクレームとして保護することを明らかにしたことである。


平成14年の特許法の改正により、 プログラムが「物」の発明として取り扱われるようになり(特許法第2条第3項第一号) 、 さらに改訂 審査基準により「構造を有するデータ」、 「データ構造」及び「学習済みモデル」がプログラムに準じて保護されるようになった。

これにより、 AIにより学習が完了した学習済みモデルが保護されるようになるが、 学習済みモデル自体 は単なる情報の提示にすぎないとして保護されない点 に注意すべきである。 学習済みモデルがプログラムの処理と共にクレームに記載されることで初めて審査基準に合致した「学習済みモデル」となるのである。 この点 は「構造を有するデータ」及び 「データ構造」に関しても同じである。

特許法の改正により,構造を有するデータ,データ構造,学習済みモデルが対象に加わったというのは初めて知った。また,保護対象の条件についても注意があり参考になった。

p. 74: 機械学習の特許事例

ここで言えることは、 単にある装置に機械学習を適用した、 というだけでは進歩性を主張しがたく特言午化できないが、 各分野(本特許では溶接分野) 特有のパラメータを入れて、 当該分野ならではの特徴を組み込めば進歩性を見出すことができ特許化の可能性がぐっと高まるということである。

AIを活用した特許では,特定の装置固有の条件を組み込むと,特許化の可能性が挙がるということが参考になった。

p. 75: パン屋に導入されたAIレジ

このAIレジは、 上図に示すようにレジ台におかれたトレイ上のパンの種類をデイープラーニングで特定しようというアイデアである。 認識率の低いパンは黄色で表示され、 他のパンの候補が表示される等、 パンならではの工夫がなされている。非常に面白いアイデアである。 このようなAI利用発明を他社に先駆けて取得することが重要である。


ベーカリースキャンHPより2018年4月12日 http://bakeryscan.com/introduction/index.html

AI活用の面白い事例で参考になった。

p. 143: 1. GE社のloT・AIビジネスモデル

第4次産業革命として、 GE社はIoT化を促進し、 エンジンにセンサを取り付け、 飛行機メーカを飛び越えて、 エンドユーザである航空会社(ユナイテッド航空、 デルタ航空、 全日空等)にコンサルテイングサービスを始めたのである。

例えば飛行機 の着陸時のエンジンの状態をセンサにより詳細に分析し、どのタイミングで着陸態勢に入札様々な環境下どのような高度で出力を弱めれば、燃料を最適化できるかを、航空会社にアドバイスするのである。

GE社のIoT・AIビジネスモデル例が書いてあり参考になった。

###. p. 162: 4. 出願すべきloTと出願優先度の低いloT
(1) 積極的に出願すべきIoT

様々な顧客にIoTx AIサービスを提供する場合は、 技術内容が第三者にとっても明らかになることから、 積極的に出願すべきである。

このような顧客向けのソリュ ーションサービス特許は、 全体的な方法、 サービス提供側の装置、 顧客端末のアプリケーション、 GUIを含め徹底的に権利化する。 また当然ではあるが、 IoT機器開通信に関わる標準特許は積極的に出願しなければならない。

(2) 出願優先度の低いIoT

一方、 自社工場内の生産管理のためのIoTシステムの場合、 または、 複数拠点 にある自社工場の生産管理のためのIoTシステムについては、 出願優先度は低い。 自社内での実施行為であるため特許権侵害の特定が困難であり、 第三者から特許権侵害と主張されるリスクは低い。 逆に自社内の生産 ・ 管理ノウハウを公開してしまい、 第三者に模倣される危険性もある。 しかも模倣されたとしても、 その事実を立証することは困難である。

特許に出願すべきIoTと優先度の低いIoTの具体例があり,参考になった。

p. 165: 5. loTXAI特許取得のポイント

(1) ビジネスモデルとIoTサービス

IoTソリューション特許は、 ビジネスモデル特許に類似しているところがある。 よくビジネスモデルは特許をとれるのですかという質問を受ける。 ビジネス方法そのものは権利取得できないが、 自然法則を利用、 つまりハードウェアが絡んでいれば特許法第2条第 1項に規定する法上の発明に該当する。


(2) 新規性と進歩性

特許になるか否かは原則として2つの特許要件を満たす必要がある。 一つは新規性、2つ目は進歩性である。


つまり、特許が成立するか否かは出願日より先に同様の公開技術が存在するか否かしか判断 されないのである。 技術内容がハイテクである必要はない。

p. 223: 2. 実装段階での周辺特許を押さえる

特許はスピードが命である。まずは、IoT、AIを用いた基本コンセプトを出願することが大事である。 このセンサを用いれば情報収集でき、 おそらくデイープラーニングを用いれば分類できる、 この程度で十分なのである。 ある程度実施可能な構成が確立しているのであれば、 速やかに特許出願することが重要である。

そしてその後、 実装が進めば、 簡単に機械学習が成功しないことがわかり、 色々な工夫が必要となる。 この工夫を後日周辺特許として押さえれば良いのである。 基本となるAIアイデアを出願し、 後日実装レベルのAI技術を出願する。 こうすれば基本特許に加えて周辺特許をカバーすることができ、 競合他社の参入を防ぐことができる。

結論

AI/IoT発明の特許化のコツが解説されていた。あまりこういう本を見ることがないので,参考になるところが多かった。

また,IoTやAIを組み合わせた事例もあり,参考になった。もっとも,特許化を考える必要のある人は,数が限られるので,一社員が知ったところで意味があるのかという気持ちはある。

社内に,知財チームがあったり,ベンチャーで新しい製品・サービスを開発しているところだと有用性が大きいだろう。

パーマリンク: https://senooken.jp/blog/2018/09/28/

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